タイトル画について (2022.09.01)

英国建築家ジョサイヤ・コンドル

明治政府は急激な日本の近代化を進めるために「富国強兵」「殖産増強」を旗頭に、米国・英国・仏国などから多数の技術者や建築家を招聘し、知識や技術を習得すべく努力をしました。その結果、日本の産業基盤が飛躍的に伸び、その象徴として数々の有名な建造物が造られ、今も現存しているものもあります。有名なお雇い建築家としては帝国ホテルを設計した米国フランク・ロイド・ライトや鹿鳴館を設計した英国ジョサイヤ・コンドルが上げられます。
ライトの建造物で現在残っているものは池袋・自由学園と神戸のヨドコウ保養所で帝国ホテルは別に移築されています。ロイドの建築物は横の広がりを強調したものが多く「プレイリー様式」と呼ばれています。
一方、コンドルは現存している建造物が結構多くあり、上野・岩崎邸、古川庭園、清泉女子大の一部、三菱美術館などがあり、ニコライ堂も施工時に関与している。
また東京大学の教授として東京駅を設計した辰野金吾らを教えている。

 

上野池之端の旧岩崎邸庭園は一般開放されており、その実用性と美しさを実感することが出来ます。
何度もスケッチ教室の皆さんをお連れしていますが、正面玄関の造りや庭園に面した居間など、実に素晴らしいの一言に尽きます。
庭園に面したテラスや階段など、コンドルの特徴があります。この四角形の正面玄関や裏庭に出るテラスなどは三菱の迎賓館になっている品川の開東閣がそっくりです。開東閣は今でも三菱のゲストハウスとして利用されており、残念ながら未だ一般公開していません
タイトル画に載せた清泉女子大のコンドルの建築物は大学敷地の一角にある旧島津邸だった建物ですが、これも三菱の2つの建築物とそっくりです。
17世紀の英国ジャコビアン調で統一され、テラスや手摺にはコロニー風の造作になっています。

なお、コンドルは国のお雇いが終わった後、三菱の仕事を請け負っていたので、今も彼の作品を見ることが出来ます、三菱美術館は計画されていたにも関わらず、建造されませんでしたが、コンドルが書いた設計図が残されており、部材類も確保されていたことから、平成になって建造されることになりました。三菱財閥の中心的存在として丸の内に一際華麗な建造物が出来ました。

ペン画淡彩について

私はペンと透明水彩絵の具を使った水彩画(主に風景画)を描いています。
この画法は「ペン水彩」「ペン彩」などとも呼ばれており、通常の鉛筆水彩に比して線がハッキリ前面に出てきて、出来上がった水彩画がハッキリした感じを受けます。
ヨーロッパで発展した「ペン画」はペンの線の濃淡で、全ての対象物を描き分ける手法で、陰影を描くことで重量感や質感を表現し、清潔感溢れる絵が描かれています。
一方、透明水彩絵の具はたっぷりの水で溶いた絵の具を淡く着色することで、写真とは違うほんのりした幻想的な絵が仕上がります。白地に黒と言う単純な「ペン画」は見るものに緊張感と率直さを訴え、生命と光を感じさせます。ペンの線の勢い、簡潔さ、清潔さなどを失わない程度に絵の具で淡く着色するのが良いと考えます。
「ペン画淡彩」とは、ペン画の持っている「清潔感」や「潔さ」をそのまま残して透明水彩の持っている良さを組み合わせたものと言えます。